金は米中首脳会談後のユーロ高が下支え

【金は英EU離脱案の行方も確認】

11月26日の週のニューヨーク金市場は、リスク回避のドル高が圧迫要因となる場面も見られたが、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言をきっかけにドル安に振れたことを受けて押し目を買われた。期近2月限は、11月15日以来の安値1,216.8ドルを付けたのち、下げ一服となった。米FRB議長は、政策金利は中立金利を「若干下回る」水準にあるとの認識を示した。これまで中立水準にはおそらく「程遠い」との見方が示されており、利上げ終了時期が早まった可能性を示唆した。一方、11月7~8日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、追加利上げが「かなり早期」に正当化される公算が大きいとの見解で当局者らがおおむね一致したことが明らかになった。また利上げの打ち止め時期やその伝達方法を巡って議論が始まったことが分かった。米短期金利先物市場では、12月の利上げ見通しに変わりはないが、来年の利上げ回数が1回になるとの見方が強まっている。今週は米地区連銀経済報告(ベージュブック)や11月の米雇用統計などの発表があり、景気見通しを確認したい。

1日の米中首脳会談では、対中追加関税を一時的に見送り、90日間の通商協議を開始することで合意した。貿易戦争の激化を回避できたことで週明けはユーロ高・円安、株高となり、リスク選好の動きになった。米ホワイトハウスは声明を発表し、2,000億ドル相当の中国からの輸入品に対する関税は2019年1月以降も10%で据え置くとした。また中国は貿易不均衡解消に向け米国から「相当量の」農産物、エネルギー、工業製品などを輸入することで合意した。ただ90日以内に合意できなければ、米国は対中関税を25%に引き上げる。今後は技術移転の強要や知的財産権保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービスや農業分野について、構造改革協議を開始するとしており、協議の行方を確認したい。金にとってリスク選好の動きは上値を抑える要因だが、協議が難航する可能性もあり、株安に対するヘッジとして買われるようなら下支え要因になるとみられる。一方、ブエノスアイレスで開かれていた20カ国・地域(G20)首脳会議の首脳宣言では、貿易は世界の経済成長の重要なエンジンと位置付けたが、米国の反対により「保護主義と闘う」との文言は盛り込まれなかった。

欧州連合(EU)が臨時首脳会議で、英国のEU離脱条件に正式合意したが、英議会で否決されるとの見方が強く、先行き不透明感が残っている。イングランド銀行(英中央銀行)の報告書によると、英首相のEU離脱計画が議会の承認を得られず無秩序な離脱に至る場合、英経済は少なくとも第2次世界大戦以降で最悪の不況に陥る恐れがある、と警告された。メイ英首相がEUと結んだ離脱合意案を英議会が否決した場合、首相は内閣不信任案を突きつけられる恐れがある。英議会での採決は11日に予定されている。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月27日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは1,871枚となり、前週の8,896枚から縮小した。今回は手じまい売りが8,727枚、買い戻しが1,702枚入り、7,025枚買い越しを縮小した。一方、11月30日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比1.18トン減の761.74トンとなった。リスク回避のドル高を受けて週初に投資資金が流出した。

11月30日にジョージ・H・W・ブッシュ元大統領(父ブッシュ)が死去した。トランプ米大統領夫妻は5日、ワシントン大聖堂でのブッシュ元大統領の葬儀に参列する。ホワイトハウスは同日を「国民追悼の日」に定めた。米金融市場が休場となるほか、連邦政府機関も閉庁する。CMEの商品市場は通常通り。

【プラチナは供給過剰見通しが圧迫要因】

ニューヨーク・プラチナ期近1月限は、供給過剰見通しなどを受けて軟調となり、9月18日以来の安値799.2ドルを付けた。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告で、今年のプラチナは15.7トン、来年は14.2トンの供給過剰になるとの見通しが示された。今年は前回の9.2トンの供給過剰見通しから下方修正された。ただ米中首脳会談で貿易戦争の激化が回避されており、安値拾いの買いが入るようなら下支え要因になるとみられる。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月27日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万2,815枚となり、前週の2万1,785枚から拡大した。新規買いが新規売りを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は20日のロンドンで9.07トン、30日のニューヨークで19.02トン(前週末19.02トン)、南アで21.87トン(同21.87トン)と変わらずとなった。米中首脳会談を受けて投資資金が流入するかどうかを確認したい。

【12月3日からの週の注目ポイント】

3日 中国財新製造業購買担当者景況指数(11月) ☆☆
ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(11月確報) ☆☆
米ISM製造業景況指数(11月) ☆☆☆
4日 政策金利発表(豪準備銀行) ☆☆☆
ユーロ圏生産者物価指数(10月) ☆☆
5日 中国財新サービス業購買担当者景況指数(11月) ☆☆
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(11月確報) ☆☆
全米雇用報告(11月) ☆☆☆
米ISM非製造業景況指数(11月) ☆☆☆
米地区連銀経済報告(ベージュブック) ☆☆
政策金利発表(カナダ銀行) ☆☆☆
6日 米貿易収支(10月) ☆☆
米製造業新規受注(10月) ☆☆
7日 景気動向指数(10月速報)
ユーロ圏国内総生産(7-9月期確報) ☆☆☆
米雇用統計(11月) ☆☆☆
米ミシガン大消費者信頼感指数(12月速報値) ☆☆

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ニューヨーク金はドル安で押し目を買われる
ニューヨーク金2月限は、11月15日以来の安値1,216.8ドルを付けたのち、ドル安を受けて押し目を買われた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けて利上げ休止前倒し観測が強まり、ドル安に振れた。テクニカル面では、1,202.4~1,252.0ドルのレンジ内で方向性を模索する動きとなっており、当面はどちらに放れるかが焦点である。1日の米中首脳会談では、対中追加関税を一時的に見送り、90日間の通商協議を開始することで合意しており、各市場の反応を確認したい。

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2018年12月3日