金は月末の米中首脳会談が当面の焦点

【金はイタリアの財政問題や英EU離脱の行方も確認】

11月19日の週のニューヨーク金市場は、ドル安を受けて堅調となった。期近12月限は7日以来の高値1,230.9ドルを付けた。クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長の発言をきっかけに世界経済の減速に対する懸念が出たことや、米経済指標で住宅市場の減速が示され、来年の米FRBの利上げ観測が後退したことを受けてドル安に振れた。ただ原油急落や株安を受けてリスク回避のドル高となる場面も見られ、金の上値を抑える要因になった。今週は月末の米中首脳会談で貿易摩擦解消に向けて合意できるかどうかが焦点である。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は18日、同会議として初めて首脳宣言で合意できないまま閉幕した。貿易や投資を巡る米中の深い溝が協力を阻んだ。中国の王毅国務委員兼外相は、APEC首脳会議で首脳宣言を採択できなかったことについて、一部の国が保護主義を「正当化」して自国の主張を他国に押しつけようとしたことが原因だと批判した。米ホワイトハウスの当局者は中国の見解について「完全に偏った解釈で、プロパガンダだ」と指摘した。APECの議長国パプアニューギニアのオニール首相は23日、議長声明を発表し、加盟諸国に対し、世界貿易機関(WTO)により積極的に参加するよう求めた。WTOが22日に公表した報告書によると、20カ国・地域(G20)による関税などの貿易制限措置は過去最大に達し、世界の貿易のうち4,810億ドルが対象になっている。WTOのアゼベド事務局長は声明で、「さらなるエスカレートは依然として本当に脅威だ」と述べ、「今の路線が続けば、経済的リスクが高まり、世界の成長や雇用、消費者物価に影響する恐れがある」と指摘した。一方、米通商代表部(USTR)は20日に発表した報告書で、中国はサイバー空間での米知的財産権の侵害行為やそれを支援する政策・慣行を継続しており、差別的な技術ライセンスの制限も引き続き行っていると指摘した。当面は11月30日から12月1日にアルゼンチンで開催されるG20首脳会議に合わせて予定されている米中首脳会談が焦点である。トランプ米大統領は22日、米中首脳会談で中国と何らかの「ディール(取引)」を行うことを望んでいると述べた。

欧州委員会は21日、イタリアの予算案に対して是正措置を求める過剰財政赤字是正手続き(EDP)を勧告した。ユンケル欧州委員長は24日、イタリアのコンテ首相を会談し、財政赤字を縮小するには、60億~70億ユーロの歳出削減で十分な可能性があるとの見解を示した。またサルビーニ、ディマイオ両副首相が交渉の余地はないと主張していることに対し、欧州連合(EU)に対する言葉の攻撃をやめねばならないとも述べた。今回の勧告を受けて欧州の会計責任者らは2週間以内に勧告内容を審査する。EU財務相らは来年1月21~22日の会合で正式にイタリアが債務過剰状態であることを宣言し、是正措置を取るよう求める見通し。一方、EUは25日の臨時首脳会議で、英国のEU離脱条件に正式合意した。メイ英首相は、可能な限りの最善の条件で合意したとし、「英議会で、そしてその先の機会で、私はそのことを全身全霊で主張し、キャンペーンを行っていきたい」と述べた。クリスマス前の採決が予定されており、英議会が承認しなかった場合、来年3月に合意なき離脱になるとみられている。イングランド銀行のカーニー総裁は、移行期間を伴わないブレグジットは、英国経済に対し、石油危機に匹敵する「大きなマイナスのショック」を与えると警告している。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月13日時点のニューヨーク金の大口投機家は9,247枚売り越し。20日時点の取組は26日に発表される。一方、11月23日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比3.24トン増の762.92トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測後退などを受けて投資資金が流入した。

【プラチナは世界経済の減速懸念が上値を抑える要因】

ニューヨーク・プラチナ期近1月限は、ドル安や金堅調を受けて12日以来の高値858.6ドルを付けたのち、世界経済の減速懸念による原油安・株安を受けて上げ一服となった。月末に米中首脳会談を控えていることも高値での買いを見送る要因となった。貿易摩擦解消に向けて合意できなければ世界経済の減速懸念が強まり、プラチナの需要伸び悩みにつながるとみられる。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家は2万1,991枚買い越し。20日時点の取組は26日に発表される。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は20日のロンドンで9.07トン(16日9.06トン)に増加、23日のニューヨークで19.02トン(同19.02トン)、南アで21.87トン(同21.87トン)と変わらずとなった。ほぼ変わらずで模様眺めの動きとなった。

【11月26日からの週の注目ポイント】

26日 独ifo景況感指数(11月) ☆☆
27日 中国工業利益(10月)
ケース・シラー住宅価格指数(9月) ☆☆
米消費者信頼感指数(11月) ☆☆
28日 米国内総生産(7-9月期改定値) ☆☆☆
米新築住宅販売(10月) ☆☆☆
29日 ユーロ圏消費者信頼感(11月確報) ☆☆
米個人所得・支出(10月) ☆☆☆
米中古住宅販売仮契約指数(10月) ☆☆
米FOMC議事録公表 ☆☆☆
30日 失業率(10月) ☆☆
鉱工業生産指数(10月速報) ☆☆
中国製造業購買担当者景況指数(11月) ☆☆
ユーロ圏消費者物価指数(11月速報) ☆☆☆
ユーロ圏雇用統計(10月) ☆☆
シカゴ購買部協会景気指数(11月) ☆☆

*重要度を3段階で表示

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ニューヨーク金はレンジ内で地合いを引き締める
ニューヨーク金12月限は、ドル安などを受けてレンジ内で地合いを引き締めた。世界経済の減速に対する懸念が出ると、安値拾いの買いが入り、1,196.6~1,246.0ドルの新たなレンジを形成した。ただ原油急落を受けてリスク回避のドル高に振れる場面も見られ、金の上値を抑える要因になった。当面は月末の米中首脳会談で貿易摩擦解消に向けて合意できるかどうかが焦点である。またイタリアの財政問題や英国の欧州連合(EU)離脱の行方と投資資金の動向も確認したい。

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2018年11月26日