金はドル高一服が支援

【金はイタリアの予算案や英EU離脱案の行方を確認】

11月12日の週のニューヨーク金市場は、ドル高一服を受けて下げ一服となった。期近12月限は10月11日以来の安値1,196.6ドルを付けたのち、1,226.0ドルまで戻した。10月の米消費者物価指数(CPI)が予想通りとなり、インフレに対する警戒感が後退した。また米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長が、米金利はFRBが中立金利と見なす水準に近づいているとし、中立的であることは「理に適う」との見解を示したことを受けてドル安が進んだ。ニューヨーク金市場で大口投機家が売り越しに転じており、ドル安が進むと、買い戻し主導で上値を試す可能性が出てくる。

今週はイタリアの予算案に対する欧州委員会の判断や、英国の欧州連合(EU)離脱で議会の反応などが焦点である。イタリアは13日に予算案を再提出したが、成長率や赤字の見通しを変更しなかった。欧州委はイタリアに対し、21日に「過剰財政赤字是正手続き(EDP)」と呼ぶ制裁手続きの開始を勧告する見通しである。勧告後、会計責任者らが2週間以内に勧告内容を審査し、EU加盟各国の財務相は来年1月21~22日の会合で、イタリアが債務過剰状態であることを宣言し、3~6カ月以内に是正措置を取るよう求める。一方、英国の欧州連合(EU)離脱を巡ってポンドが乱高下した。メイ英首相が、EU離脱を巡る合意草案が閣議で承認されたと発表するとポンドが急伸したが、閣僚辞任が明らかになると急落した。同首相は草案を堅持する方針を表明したが、議会で承認されない可能性が高いとみられている。また保守党内ではメイ氏の党首としての不信任投票を求める署名活動が行われており、合意なき離脱に対する懸念が高まっている。ユーロやポンドが下落すると、金の上値を抑えるとみられるが、金融市場の混乱に対する懸念が強まると、金に逃避買いが入る可能性もある。

月末の米中首脳会談を控え、中国が米国から要請のあった幅広い通商改革に対し、書面で回答し、協議が再開された。トランプ米政権は知的財産権侵害や工業への助成金、米企業の参入障壁、米国の対中貿易赤字などに対して中国政府を非難していた。ただ米政府当局者は中国の回答について、貿易問題打開につながる可能性は低いとの見解を示した。ムニューシン米財務長官と劉鶴中国副首相が9日に電話会談を行い、同副首相が近く訪米すると伝えられた。ロス米商務長官は会談がうまく行けば、貿易摩擦解消に向けた将来の交渉の「枠組み」で合意する可能性が高いが、米国は来年1月に中国からの輸入品2,000億ドル相当への関税率を予定通り25%に引き上げる計画だと述べた。またペンス米副大統領は17日、「我々は良くなることを望んでいるが、中国がやり方を改めるまで、米国は方針を変えない」述べ、米政権がさらなる対中追加関税の発動に動くこともあり得ると示唆した。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月13日時点のニューヨーク金の大口投機家の取組は9,247枚売り越しとなり、前週の1万9,026枚買い越しから売り方に転じた。今回は手じまい売りが725枚、新規売りが2万7,548枚出て、合計2万8,273枚売られた。一方、11月16日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比4.45トン増の759.68トンとなった。週初に安値拾いの買いが入り、762.00トンまで増加した。

【プラチナはレンジ上放れ前の水準に戻る】

ニューヨーク・プラチナ期近1月限は、米中の貿易摩擦に対する懸念後退などを受けて6月25日以来の高値881.5ドルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル高を受けて調整局面を迎えた。中国経済に対する懸念による株安も圧迫要因である。ただ中国当局は大幅な成長鈍化の回避に向け、銀行融資の促進や減税、インフラ支出前倒しなどの措置を打ち出している。景気刺激策に対する期待が出るようなら、プラチナの下支え要因になるとみられる。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万1,991枚となり、前週の2万3,924枚から縮小した。手じまい売りが買い戻しを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は16日のロンドンで9.06トン(9日9.47トン)、ニューヨークで19.02トン(同19.31トン)、南アで21.87トン(同22.24トン)に減少した。調整局面を迎え、投資資金が流出した。

【11月19日からの週の注目ポイント】

19日 貿易収支(10月) ☆☆
ユーロ圏国際収支(9月)
20日 米住宅着工・許可件数(10月) ☆☆
21日 米耐久財受注(10月) ☆☆
米ミシガン大消費者信頼感指数(11月確報値) ☆☆
米中古住宅販売統計(10月) ☆☆
22日 米国休場
消費者物価指数(10月) ☆☆☆
ユーロ圏消費者信頼感(11月速報) ☆☆
23日 勤労感謝の日
ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(11月) ☆☆
ユーロ圏サービス部門購買担当者景況指数(11月) ☆☆

*重要度を3段階で表示

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ニューヨーク金は1,200ドル前後で下げ止まる
ニューヨーク金12月限は、10月11日以来の安値1,196.6ドルを付けたのち、ドル高一服を受けて下げ一服となった。予想通りの米消費者物価指数(CPI)やクラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長の発言を受けてドル高が一服した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告で、大口投機家が売り越しに転じた。今週はイタリアの予算案に対して欧州委員会が制裁発動手続きを開始すると先行き懸念から金は買い戻し主導で上昇する可能性が出てくる。抵抗線は10月26日高値1,246.0ドル。

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2018年11月19日