金は米長期金利上昇やドル高が圧迫要因

【NY金は大口投機家の売り越しが2001年5月以来の高水準】

 10月1日の週のニューヨーク金市場は、イタリアの財政懸念を受けて買い戻し主導で上昇する場面も見られたが、好調な米経済指標などを受けてドル高に振れると、戻りを売られた。12月限は1,184.3~1,220.7ドルのレンジ相場となったが、米10年債利回りが2011年5月以来の高水準となる3.248%まで上昇しており、ドル高が続くと、レンジ下限を試す可能性がある。ただ長期金利上昇に対する警戒感から株価が急落する場面も見られた。ニューヨーク金の大口投機家の売り越しが拡大しており、株安に振れると、買い戻し主導で上昇しやすい。

 ADP全米雇用報告や米ISM非製造業総合指数(NMI)、米新規失業保険申請件数、米製造業新規受注が好調な内容となり、米景気の先行き期待が強まった。一方、9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が13万4,000人増となり、事前予想の18万5,000人増を大幅に下回った。ただハリケーン「フローレンス」の影響とみられている。また7・8月分が上方修正された。失業率は0.2%ポイント低下の3.7%と、約49年ぶりの水準に改善した。失業率の事前予想は3.8%。米国債の利回りが一段と上昇しており、ドルが買われやすい。今週は11日に9月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。

 イタリアの財政問題に対する懸念が続いている。連立政権を構成する極右政党「同盟」の有力議員で、下院予算委員長のクラウディオ・ボルギ氏が2日、イタリアがユーロ圏を離脱すれば、経済情勢が改善するとの認識を示した。ただ同氏はロイターに対し、「ユーロ圏離脱は政府のプログラムにはなく、そうする計画もない」と述べた。一方、イタリア政府は2019年の財政赤字目標を国内総生産(GDP)比2.4%に設定することで合意しており、コンテ首相は3日、GDP比率について、2020年は2.1%、21年は1.8%とすることを政府として決定したことを明らかにした。ただ欧州委員会は、イタリア政府が示した2019年の財政赤字目標に関し、同国政府に対して違反手続きを開始する書簡を準備している、と伝えられた。来年度予算案の編成方針は10月15日まで欧州委に提出しなければならない。週明けはイタリアの予算案を巡って欧州連合(EU)との間で、言葉の応酬が激化したことを受けてイタリアの国債利回りが急上昇した。

 米国とカナダは北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で合意した。カナダ、メキシコ、米国の3カ国は30日に合意し、3カ国協定は維持されることになった。新協定では、カナダ側が米国の不当な関税措置への対抗手段として不可欠としていた紛争解決制度が維持されることになったが、カナダ乳製品市場への米酪農業者のアクセスが拡大された。米自動車関税によるカナダ自動車業界への打撃は避けられた。通商リスク後退は株価の支援要因である。ただ米中の貿易戦争は継続している。また欧州委員会のマルストローム委員(通商担当)は、欧州連合(EU)と米国が工業製品への関税を回避するために締結を目指す貿易協定について、協議の準備作業にも入っていないと述べた。一方、英国の欧州連合(EU)離脱交渉でEU離脱(ブレグジット)交渉担当者は、合意が「非常に近い」と各国外交担当者に述べた。アイルランドの国境問題で合意できるかどうかを確認したい。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月2日時点のニューヨーク金の大口投機家の売り越しは2万1,822枚となり、前週の1万7,648枚から拡大し、2001年5月以来の売り越し水準となった。今回は手じまい売りが450枚、新規売りが3,724枚出て、4,174枚売り越しを拡大した。一方、10月8日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は9月28日比12.07トン減の730.17トンとなった。好調な米経済指標を受けて米国債の利回りが急上昇し、投資資金が流出した。

【プラチナはドル高とパラジウム堅調でもみ合いに】

 ニューヨーク・プラチナ1月限は、ドル高などを受けて戻りを売られたが、パラジウム堅調が下支えとなった。3日高値836.44ドルで上げ一服となった。9月の戻り高値841.8ドルを突破できず、新たなレンジを形成しつつある。一方、パラジウムはリースレート(貸出金利)が高止まりし、供給ひっ迫感が強い。今年の米新車販売台数の見通しが上方修正されており、販売の動向次第では一段高の可能性がある。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは7,049枚となり、前週の2,690枚から拡大した。新規買い・買い戻しが入った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は8日のロンドンで9.58トン(9月28日9.70トン)、5日のニューヨークで18.88トン(同18.89トン)に減少、8日の南アで23.86トン(同23.86トン)と変わらずとなった。

【10月8日からの週の注目ポイント】

8日 体育の日、カナダ休場
中国財新サービス業購買担当者景況指数(9月) 53.1(予想51.4)
独鉱工業生産指数(8月) 前月比-0.3%(予想+0.4%)
9日 国際収支・経常収支(8月) ☆☆
景気ウォッチャー調査(9月)
独貿易収支(8月)
10日 機械受注(8月) ☆☆
英貿易収支(8月)
英鉱工業生産指数(8月) ☆☆
米生産者物価指数(9月) ☆☆
米卸売在庫(8月)
11日 企業物価指数(9月)
米消費者物価指数(9月) ☆☆☆
米財政収支(9月) ☆☆
12日 中国貿易収支(9月) ☆☆
ユーロ圏鉱工業生産(8月) ☆☆
米輸出入物価指数(9月)
米ミシガン大消費者信頼感指数(10月速報値) ☆☆

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ニューヨーク金はレンジ相場を継続
ニューヨーク金12月限は、イタリアの財政懸念を受けて上昇する場面も見られたが、ドル高を受けて戻りを売られた。1,184.3~1,220.7ドルのレンジ相場を継続しており、テクニカル面では中立である。ただ米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しや好調な米経済指標を受けてドル高に振れやすく、金ETF(上場投信)から投資資金の流出が続いている。また米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告で、ニューヨーク金の大口投機家の売り越しが拡大しており、売り圧力が強い。レンジ下限を割り込むと、8月16日に付けた1,167.1ドルを目指す可能性が出てくる。

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2018年10月9日