金は米中の貿易戦争の行方などを確認

【金は投資資金流出やファンド筋の売りが圧迫】

 9月3日の週のニューヨーク金市場は、貿易摩擦や新興国市場に対する懸念が圧迫要因となったが、英国の欧州連合(EU)離脱交渉に対する期待感からポンド主導でドル安に振れたことが下支えとなった。ただ8月の米雇用統計が好調な内容となり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しが強く、ドル高が再開すると、1,200ドル前後の水準から下放れる可能性が残る。

 トランプ米大統領は7日、「中国側の動き次第で、2,000億ドル規模の中国製品に対する関税措置が近く発動される可能性がある」とした上で「その後、私が望めば、さらに2,670億ドル相当の追加関税を急きょ発動する用意があると述べた。パブリックコメント(意見公募)期間は6日に終了しており、2,000億ドル規模の中国製品に対する追加関税が発動するとみられている。すでに500億ドル相当の中国製品に対する25%の追加関税が発動されており、現在示されている関税措置が実施されると、合計5,170億ドルとなり、2017年の中国からの輸入総額5,050億ドルを上回る。中国は600億ドル相当の米国製品に対する報復措置を取るとしているが、米国からの輸入総額は1,300億ドルで貿易戦争は米国有利である。一方、米国とカナダの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉が5日に再開されたが、カナダの乳製品の市場開放を巡る問題などで協議が難航した。カナダ交渉団は米国との協議は月末まで継続する可能性があるとの見方を示しており、話し合いがまとまるかどうかを確認したい。貿易摩擦に対する懸念が残ると、リスク回避でドル高に振れやすく、金の圧迫要因になる。

 8月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は20万1,000人増となり、前月から伸びが加速した。事前予想の19万1,000人増も上回った。失業率は前月から横ばいの3.9%。事前予想は3.8%。時間当たり平均賃金は前年比2.9%上昇し、2009年6月以来の高い伸びとなった。米連邦準備理事会(FRB)は25~26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定するとみられている。米短期金利先物市場では、年内あと2回の利上げ実施が織り込まれており、今回の米雇用統計を受け、来年2回の利上げを実施する確率が約50%に上昇した。米FRBの利上げ観測や貿易摩擦に対する懸念を受けて新興国市場から投資資金が引き揚げられており、先行き懸念が強まると、金の換金売りが進む可能性がある。トルコの通貨危機やアルゼンチンの国際通貨基金(IMF)の支援前倒し要請、南アのリセッション(景気後退)入りなど新興国市場の動向も確認したい。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月4日時点のニューヨーク金の大口投機家の売り越しは1万3,497枚となり、前週の3,063枚から拡大し、2001年12月以来の売り越し水準となった。今回は手じまい売りが7,608枚、新規売りが2,826枚出て、1万0,434枚売り越しを拡大した。一方、9月7日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比9.72トン減の745.44トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しなどを受けて投資資金が流出した。

【プラチナは値固めも貿易摩擦が圧迫要因】

 ニューヨーク・プラチナ10月限は、おおむねドル相場次第の値動きとなったが、貿易摩擦に対する懸念が残ることが上値を抑えた。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)は四半期報告で、2018年は自動車触媒需要の減少などを受けて2年連続の供給過剰になるとの見通しを示した。8月の米自動車販売台数は前年同月比2.4%増の123万2,926台と通商リスクにもかかわらず、好調となったが、欧州市場でディーゼル車離れが続くと、プラチナの上値を抑える要因になる。一方、パラジウムが供給ひっ迫に対する懸念を受けて1,000ドル付近まで上昇したことは下支え要因である。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月4日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の売り越しは1万1,916枚となり、前週の1万0,976枚から拡大した。新規売りが新規買いを上回り、過去最大の売り越しとなった。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は7日のロンドンで9.97トン(31日9.97トン)と横ばい、ニューヨークで19.19トン(同19.20トン)に減少、南アで23.68トン(同23.38トン)に増加した。

【9月10日からの週の注目ポイント】

10日 国内総生産(4-6月期2次速報) ☆☆☆
国際収支(経常収支)(7月) ☆☆
中国消費者物価指数(8月) ☆☆
中国生産者物価指数(8月) ☆☆
英鉱工業生産指数(7月) ☆☆
11日 独ZEW景況感指数(9月) ☆☆
米卸売在庫(7月)
12日 ユーロ圏鉱工業生産(7月) ☆☆
米生産者物価指数(8月) ☆☆
米地区連銀経済報告(ベージュブック) ☆☆
13日 機械受注(7月) ☆☆
金融政策理事会(ECB) ☆☆☆
英政策金利公表(BOE) ☆☆☆
米消費者物価指数(8月) ☆☆☆
14日 中国小売売上高(8月) ☆☆
中国鉱工業生産(8月) ☆☆
米小売売上高(8月) ☆☆☆
米輸出入物価指数(8月)
米鉱工業生産・設備稼働率(8月) ☆☆
米企業在庫(7月)
米ミシガン大消費者信頼感指数(9月速報値) ☆☆

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ニューヨーク金の戻り売り圧力が強い
ニューヨーク金12月限は、ドル相場次第の値動きとなるなか、もみ合いとなった。ただ8月28日に付けた約2週間ぶりの高値1,220.7ドルで上げ一服となり、25日移動平均線に上値を抑えられている。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しが強いなか、金ETF(上場投信)からの投資資金流出が続いている。またファンド筋の売り越しが拡大しており、1,200ドル前後から下放れると、2番底を探りに行くことになりそうだ。トランプ米大統領が2,000億ドル規模の中国製品に対する追加関税を発動する意向を示しており、米中の貿易戦争の行方も確認したい。

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2018年9月10日