金は貿易戦争に対する懸念も投資資金流出などが圧迫

【金はドル高が続くと一段安の可能性】

 7月9日の週のニューヨーク金市場は、8月限が2017年7月以来の安値1,236.2ドルを付けた。米国が対中追加関税を課す方針を示したことやドル高が圧迫要因になった。メイ英首相の欧州連合(EU)離脱計画に反発して8日にEU離脱担当相を辞任したデービス氏に続き、ジョンソン外相が9日辞任した。英国のEU離脱の先行き懸念が出てポンド主導でドル高に振れる場面も見られた。

 米国は追加で2,000億ドル規模の中国製品に対して10%の関税を課す方針を示した。ただ対中関税リストは2カ月間のパブリックコメント募集期間を経て最終決定するとしており、発動までには時間の猶予がある。米国の対中追加関税について、中国商務省は、全く受け入れられないとし、対抗措置を取らざるを得ないと表明した。ムニューシン米財務長官は、中国との通商問題について、中国側に構造的な変革を行う意思がある場合、米国は交渉を再開する可能性があるとの考えを示した。通商協議が再開される可能性もあり、実際に発動するかどうかが今後の焦点である。一方、当面は米国が中国からの輸入品160億ドルに対する関税発動の発表を控えている。6日に中国からの輸入品340億ドルに対する25%の関税発動を発表しており、第2弾の追加関税となる。米中の関税発動でリスク回避の動きが出て株安・円高となる場面も見られたが、貿易戦争の勝者は米国になるとの見方からドル高に振れ、金の圧迫要因になっている。

 6月の米小売売上高は前月比0.5%増と事前予想と一致した。ただ5月の数字は当初発表の0.8%増から1.3%増へ上方改定され、2017年9月以来の大幅増加となった。第2四半期に経済が好調に伸びたとの見方が強く、米連邦準備理事会(FRB)が年内あと2回の利上げ予想に変わりがなければドル高要因となる。今週はパウエル米FRB議長による経済・金融政策に関する半期に一度の議会証言があり、内容を確認したい。

 インドのルピー建て金価格が前週、5カ月ぶりの安値を付け、実需筋の買い意欲が高まったが、アジア市場の他の主要国では買い方が一段安を期待して引き続き様子見に回った。インドの金プレミアムは1.5ドルとなり、前々週から横ばいとなった。ただインドでは実需筋の買いが入ったが、投資需要が高まるにはさらなる価格下落が必要とみられている。一方、中国の金プレミアムは1~4ドルとなり、前々週の2~5ドルから下落した。人民元が軟調に推移し、投資資金は他の分野に向かった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月10日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは8万1,434枚となり、前週の7万8,327枚から拡大した。今回は新規買いが3,827枚、新規売りが720枚入り、買い越しを3,107枚拡大した。一方、7月16日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は6日比8.23トン減の794.01トンとなった。貿易戦争に対する懸念が残るが、投資資金の流出が続いた。

【NYプラチナは売られ過ぎの見方】

 ニューヨーク・プラチナ10月限はドル高や金軟調を受けて戻りを売られた。米国が対中追加関税を課す方針を示しており、貿易戦争が長期化すると、圧迫要因になるとみられる。ただ市場では、ファンド筋が売り方に回ったことや、南アの鉱山会社の生産コストを下回ったことを受けて売られ過ぎとの見方が出ている。南アの生産コストは834ドルであり、安値が続くと、供給面で影響が出るとみられている。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月10日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の売り越しは6,867枚(前週6,902枚)に縮小した。買い戻しが手じまい売りを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は13日のロンドンで10.86トン(6日10.68トン)、16日のニューヨークで17.31トン(同15.98トン)に増加、南アで22.75トン(同24.28トン)に減少した。

【原油は供給ひっ迫の懸念後退で急落】

 ニューヨーク原油は、リビアの出荷再開や貿易戦争に対する懸念を受けて軟調となり、6月22日以来の安値7.58ドルを付けた。西部トリポリ側のリビア国営石油会社(NOC)が東部の4つの輸出港からの出荷についての不可抗力条項を撤回し、輸出を再開すると発表したことから供給ひっ迫に対する懸念が後退した。米中の貿易戦争に対する懸念も下げ要因となった。また米国が石油に関する対イラン制裁の一部免除を検討しており、行方を確認したい。米エネルギー情報局(EIA)が発表した7月6日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比1,263万3,000バレル減少した。事前予想は480万バレル減。予想以上に減少したが、需要が低迷しており、上値を抑える要因になった。一方、米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された7月13日までの週の米石油リグ稼動数は前週比変わらずの863基となった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月10日時点のニューヨーク原油の大口投機家の買い越しは65万4,465枚となり、前週の65万6,720枚買い越しから縮小した。手じまい売りが買い戻しを上回った。一方、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている原油ETF(コード:USO)の残高は16日時点で1億2,880万株となり、6日比1,070万株増加した。

【7月16日からの週の注目ポイント】

16日 中国GDP(第2四半期) 6.7%
中国小売売上高(6月) 前年比+9.0%
中国鉱工業生産(6月) 前年比+6.0%
米小売売上高(6月) 前月比+0.5%
IMF世界経済見通し改定版公表 世界全体+3.9%
17日 米鉱工業生産(6月) ☆☆
米対米証券投資(5月)
パウエルFRB議長、上院銀行委員会で半期に1度の議会証言 ☆☆☆
18日 英消費者物価指数(6月) ☆☆☆
米住宅着工件数(6月)
米地区連銀経済報告(ベージュブック) ☆☆
パウエルFRB議長、下院金融委員会で半期に1度の議会証言 ☆☆
19日 日本貿易統計(6月)
豪雇用統計(6月) ☆☆☆
米景気先行指数(6月)
南アフリカ中銀政策金利 ☆☆☆
クオールズFRB副議長、講演 ☆☆
20日 日本消費者物価指数(6月) ☆☆
セントルイス連銀総裁、講演 ☆☆
21日 G20財務相・中央銀行総裁会議(22日まで) ☆☆

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ニューヨーク金はダブルボトムか一段安か分岐点に
ニューヨーク金8月限は2017年7月以来の安値1,236.2ドルを付けた。米国が対中追加関税賦課の方針を示し、貿易戦争に対する懸念が残るが、勝者は米国との見方やドル高を受けて売り優勢となった。RSIが再び売られ過ぎの水準に近づいたが、金ETF(上場投信)から投資資金が流出し、圧迫要因になった。ダウブルボトムを形成するのか、1,200ドルの節目に向けて一段安となるのか、分岐点に差し掛かった。

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2018年7月17日

提供:ALL先物比較