原油の価格は在庫の変化で動くことが多い

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 商品価格は需要と供給の変化が価格に反映されるということは、一般的に当てはまる。

 一般的というのは、市場が正常に機能している時である。しかし、何等かの思惑が市場を支配して価格を動かすと、需給とは関係のない価格になることがある。
 また、需給の変化はその絶対値の変化ではなく、予想値との乖離が大きい場合は市場価格に大きく反映されることが多い。

 需要と供給の変化を表す指標として在庫量の変化がある。平常時には、米国のエネルギー情報局が毎週水曜日(日本時間では木曜日早朝)に公表する石油週報における原油在庫量の変化が価格に反映されることが多い。たとえば、市場参加者の予想が今週の原油在庫は先週に比べて減少するだろうと思っていた時に、EIAの週報の原油在庫量が大きく増加すれば、価格は急反発する。その割合は、減ると思っていたものが増えた時の方が反発する度合いが大きい。

 在庫量は供給量マイナス需要量と考えられる。米国オクラホマ州クッシングにおける原油在庫に対する供給とは、米国内生産量+輸入量である。一方需要量とは、石油精製設備への原油投入量であり、それはガソリンや灯油、軽油、重油、ジェット燃料、ナフサ等の石油製品需要の多寡によって、石油精製設備が生産するため原料として、オクラホマ州のクッシングから原油を引き出す量である。

 石油アナリストは、毎週原油在庫が増えるか減るかを予想しているが、変数が多くてサプライズな結果となることが多々ある。たとえば、油田からのパイプラインが満杯となり、その週は運べなくなると原油の生産も落ちるし、クッシングへの原油の供給も細ることになる。また、100万トン級の大型タンカーが入港すれば、その週の原油供給は増え、逆に最近のように輸出が徐々に増え始めると輸出需要も勘案しなければならない。年間のデータを見ると米国の原油の輸入は減り、輸出は増加しているが、各週では多くなったり少なくなったり、船舶の動向によって異なっているので、アナリストの予測はしばしば外れる。
 ちなみに、米国の原油の輸出設備はまだ100万トン級の大型タンカーが入港できる輸出設備がほとんどなく、現在港湾設備を建設中である。

 2008年に原油価格が147ドルまで上昇した時のように、原油在庫の動きを市場は全く関心を持たず、ひたすら価格が上昇したり、2016年に原油価格が26ドルまで下がった時ように、原油在庫が週単位で減っても、ひたすら原油価格は下落を続けるトレンドが出ることもある。
 それらの大相場の背景には、ピークオイル論とか、原油は作られ過ぎだという市場全体のセンチメントが多くの投資家を覆っている。

 こうした例外を除けば、原則として商品価格は需要と供給の関係及びその将来の予想に基づいて動く。週単位のさざ波は別として、トレンド的には需要が供給を上回れば上昇し、供給過剰であれば価格はなかなか上がらないことになる。
 原油の需給は現時点では供給過剰であるが、OPECが減産をきちんと履行すれば、需給はバランスし、米国がその時にそれ程原油生産を増やさなければ、価格は上昇するだろう。

    • 株式会社コモディティー インテリジェンス
      近藤雅世(こんどう まさよ)

      1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
      アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。 商品ファンドを日本で初めて作った一人。
      2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。
      2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンス設立代表取締役社長就任。