市場とは何か その26

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 近年の証券取引は、コンピューターによるハイフリークエンシー取引が席捲するようになっている。個人投資家でも以前は株を買ったまま企業の成長を待って株を持ち続けるという長期投資が主体であった。
 しかし、時代とともに、より短期の利益を目指す人々が多くなっている。個人投資家は、デイトレーダーとなり、日中の数時間で大金を稼ごうとする人々が出現した。

 筆者はかって商社で商品ファンドを日本で初めて組成し、18人の世界屈指のファンドマネージャー(CTA)に運用を託して資産運用商品を開発した。CTAはそれぞれ自慢の投資手法を持ち、実績として収益を上げてきた経歴を持つ。
 だが、毎年続けて優秀な成績を残すトレーダーはほとんどいない。逆に、私が知っている優秀な実績を持つ債券ディーラーは、年に3回しかトレードをしない。それが本当かどうかは知るべくもないが、考え方としては、取引はできるだけ少なくするというのが彼の方針であった。私はこの方が理にかなっていると思っている。

 確率の法則で大数の法則というのがあり、これはシンプルな法則であるため、正しいと思っている。大数の法則とは、取引回数を多くこなせばこなすほど、確率は2分の1に近づくということだ。じゃんけんを1回するなら勝つか負けるかは2分の1である。2回するなら、勝勝・勝負・負負・負勝の四通りになる。3回するなら、勝勝勝・勝勝負・・・となっていき、勝ち続ける確率はどんどん小さくなり、数多くじゃんけんすればするほど、勝ち負けの回数は2分の1に近づく。

 投資家が狙っているのは、釣鐘型の確率分布の左端にいかに寄るかということである。つまり1万回じゃんけんをして1万回勝つ人は一人いるので、その人になることを目指している。じゃんけんをすればするほど勝ち残る確率はどんどん小さくなる。
 何を言いたいかといえば、アナリストとして毎日金や原油の価格を予測しているが、年に何回かだけここぞという時がある。たとえば、金の場合はファンドの売りポジションが過去最大になっていれば、そろそろ金価格はファンドが買い戻して上がるのではないかと思う。また原油価格が下げに下げて25ドルになったときは、30ドル前後の頃からそろそろ原油価格は反発するだろうと確信を持つ。極端に行き過ぎた場面では逆張りは有効である。それでも天井と底を取ることは難しい。しかし傾向は何となくわかる時がある。くだんの債券投資家はそうした相場に確信を持った時だけ投資するのである。

 明日は晴れるかと毎日聞かれれば、そう毎日はわからないと答えるのが常識であるが、そろそろ冬になるので寒くなるだろうという言い方なら、この時期なら、かなりの確率で当たるだろう。賭け事は、それ程確実な時だけするべきである。

    • 株式会社コモディティー インテリジェンス
      近藤雅世(こんどう まさよ)

      1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
      アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。 商品ファンドを日本で初めて作った一人。
      2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。
      2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンス設立代表取締役社長就任。