市場とは何か その24

92878016_l.jpg

 商品先物取引は証拠金取引である。つまり、金1㎏の延べ棒を田中貴金属で購入すると、2018年11月20日の価格は4,828円/gであるから482万8千円プラス消費税の資金が必要となる。

 しかし、東京商品取引所で金1kgの1年先物2019年10月限を買うと、4,415円/gであった。今は441万5千円の資金は必要ではなく、11月16日から30日に適用される金標準取引の証拠金7万8千円を商品取引員に預託すれば金1枚の取引ができる。レバレッジは441万5千円÷7万8千円=約56.6倍である。この証拠金を預託しておけば一年後の2019年10月の納会日に現受けすると言えば、99.99%の純金1㎏をその時の価格がどうであれ、441万5千円+消費税で金の1㎏延べ棒の受渡を受けることができる。田中貴金属で購入するよりはるかに安く買える。
 但し、今後の1年間で価格が78円以上下がった場合は追加の証拠金を預託する必要がある。また1年後の金価格が4,415円/g以下になっていても、約束通り、441万5千円+消費税を支払う必要がある。商品先物取引は、商品先物取引所法に則り、反対売買により差金決済ができると規定されている。

 つまり2019年10月までの間ならいつでも、その時点の時価で売却でき、買い値と売り値の差額を清算することになる。価格が下がっており、差金を支払う必要がある場合は証拠金を充当できる。つまり、価格が78円下落すると、商品取引員から追加の証拠金を要求されるが、証拠金を追加しない場合は、自動的に差金決済されてしまう。この場合は証拠金以上の損失が発生することもあり、その損失は支払う必要がある。
 金の場合は倍率が1000倍と決められているので、1円の価格の上下は1000円の損益となり、商品によって倍率は異なっている。例えばプラチナは500倍であり、プラッツドバイ原油(原油のこと)は50倍である。WTI原油価格が米国で1ドル下落すると、東京商品取引所のプラッツドバイ原油価格は、約112円下がるが(ドル円為替が112円/ドルの場合)投資家の損益は112円×50倍=5600円の損益となる。
 商品先物取引は売りからでも買いからでも入れるが、それは、商品先物取引は将来受渡する商品の売買を契約することであると理解すればわかりやすい。契約なのだから売りでも買いでもよく、金や原油を保有していなくても売り契約は可能である。受渡限月の納会日までに反対売買すれば、契約は解除でき、もし受渡するなら、どこかから東京商品取引所が規定している品質のものを規定された受渡し方法で受渡し場所に持ち込めばよい。なお、ガソリンや灯油は受渡しができるが、原油の場合は受渡しという規定は無い。

 商品先物取引のあらましは以上だが、留意点の第一は、『投資資金の約5分の1しか、証拠金として使ってはならない』ということである。5分の1というのは筆者の目安であり根拠のあることではないが、100万円資金があって、証拠金7万8千円の金を10枚買うと、価格が22円下がった場合、追加の証拠金を要求される。つまり、100万円の資金で78万円を証拠金に使っているので、残りは22万円であるが、価格が22円下がると、評価損益は1枚当たり2万2千円の損失となり10枚では22万円の損失で、100万円の資金はゼロとなってしまう。商品取引員は追加でさらに78万円の資金を入金するよう催促してくる。22円の価格変動は長くても1週間以内に発生することが多い。
 つまり、100万円の資金で10枚取引をすると、最悪の場合1週間で資金を追加しなければならなくなるということである。100万円の5分の1の20万円を証拠金に充てるなら、2枚の取引となり、15万6千円を証拠金として使うが、残金は84万4千円あるので、価格が422円下がるまでは追加の資金は発生しないことになる。これなら、1ヵ月は保つであろう。

    • 株式会社コモディティー インテリジェンス
      近藤雅世(こんどう まさよ)

      1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
      アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。 商品ファンドを日本で初めて作った一人。
      2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。
      2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンス設立代表取締役社長就任。