トロイオンスという言葉の起源をめぐって

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1. トロイオンスという言葉

 金取引を行っていると、トロイオンスという言葉を聞くことがあるのではないでしょうか。日本ではグラム単位で取引されるので、実際の取引ではトロイオンスは使いませんが、金の値動きを見て投資戦略を立てる場合、トロイオンスという単位で見ていくことになると思います。ドル表示のチャートではトロイオンスが単位になります。

 私は、初めてこの言葉に接したとき、何とも古めかしいというか、何か格調高いというか、いい意味での軽い驚きがありました。なぜ、「トロイ」がつくのか、どうしてグラム表示しないのか?と正直感じました。トロイがつくということは、トロイの木馬と関係があるのか、ならばミケーネ文化などと関係があるのか。

 今回は、このトロイオンスという言葉について取り上げてみたいと思います。

2. トロイオンスの歴史

 トロイオンスのトロイとは、フランのシャンパーニュ地方のトロワという地域の名称を由来としているようです。トロワを英語的に発音し、それにオンスを付けて呼び、トロイオンスという単位ができあがりました。このシャンパーニュ地方とは、シャンパンやワインで有名な地域です。その他この地域には名産品が多いようです。

 シャンパーニュ地方の貴族が、この地を経済の中心にしようと努力した結果、この地方に、イタリア商人などが集まり、銀を決済手段として取引をしたことによりトロイオンスという言葉が広まっていきます。中世の商業資本主義は、まだ規模は小さく、経済人類学者カール・ポランニーがいうように、市場が社会の中に埋め込まれている状態、といってよいでしょう。

 しかし、こうした商業資本主義の段階を経て、次の工業資本主義の段階が準備されていきます。今、金などの取引に使われているトロイオンスは、こうした商業資本主義の時代から伝統に基づいている、といえるでしょう。

3. 現代につながるトロイオンス

 イタリア商人などが活躍した時代には、ヨーロッパの商人が世界に目を向けていた時代でした。あちらこちらで、異国の人たちを取引するときにも、取引単位のことが常に付きまとったと思われます。ヨーロッパ内ではそうした共通インフラを持った市場のうちの一つがトロワだった考えられます。その単位こそ、トロイオンスでした。

 イタリア商人やドイツのハンザ同盟などは、それぞれ保険のローマン型起源、ゲルマン型起源で取り上げられることがありますが、近代の経済的営みの萌芽的な形がありました。そしてトロイオンスという言葉も、その広範な活動の一旦を担っていたのではないかと考えてよいかと思います。

 今回は、トロイオンスという言葉の起源について、と題してお話ししました。