金:究極の保険-アラン・グリーンスパン氏インタビュー<その2>

3.昨年、我々はブレグジット、トランプ氏の大統領選勝利及び反体制政治勢力の決定的増加を目の当たりにしました。中央銀行と通貨政策は、新たな環境に順応するとお考えですか?

我々が持つ唯一の事例は、1970年代において起こった事例であり、直近のスタグフレーションを経験し、制御不能なインフレスパイラルについての実際の懸念がありました。ポール・ボルカー氏が、連邦準備制度理事会の議長となり、浸食を食い止めるためFFレートをその後20%に引き上げました。それは、大変不安定な時期でしたが、連邦準備制度の歴史の中て最も効果的な通貨政策でした。私は、システムの安定化のためにそのような動きを繰り返さないよう望んでいます。しかし、未解決の問題が残されています。

欧州中央銀行(ECB)は、連邦準備制度よりも大きな問題を抱えています。ECBのバランスシートの資産の部は、マリオ・ドラギ氏がユーロを守るために手段を選ばないと述べて以来、徐々に成長し以前より大きくなっています。そして、私は、ユーロそれ自体の将来について、重大な懸念を有しています。北部ヨーロッパは、南部ヨーロッパの赤字に対し資金提供を行ってきましたが、それは漫然と続くものではないでしょう。ユーロ圏は、機能していないのです。

一方英国では、ブレグジットが奏功するのかは依然不透明です。日本と中国も同様に問題が泥沼化しています。したがって、適度に強固な規模の大きい経済圏を見つけることは難しくなっていますし、中央銀行がどのような反応をするのか予測はほぼ不可能です。

4.金は公式な通貨ではありませんが、通貨制度においては、重要な役割を果たしています。金は新しい地政学的環境の中でどのような役割を果たすとお考えですか?

金本位制は、19世紀終わりから20世紀初頭をピークに実施されました。世界各地の経済が繁栄していたその時期は、堅固な生産性成長とインフレがほとんどなかったことで特徴づけられます。

しかし、今日、19世紀の金本位制は機能していなかった、という見方が一般的になっています。私は、金本位制が機能していない状況は、サイズの違う靴を履き、その靴は履き心地が悪い、といっているようなものだと考えています。金本位制自体が失敗したのではなく、政治的な問題によるものでした。第一次世界大戦は、固定相場制の平価を無力化しましたし、どの国も1913年に享受した米ドルに対する低い為替レートに甘んずるという不面目を明らかにしたくなかったのです。

例えば、英国は、1913年の対米ドル(1ポンド当たり4.86米ドル)と同じ為替レートで金本位制に復帰します。それは、ウィンストン・チャーチル、そして財務大臣による歴史に残る誤りでした。これにより、1920年代終わりに、英国は深刻なデフレに陥り、イングランド銀行(英国の中央銀行)は、1931年には金本位制から離脱せざるを得ませんでした。

機能していなかったのは、金本位制ではありませんでした。機能しなかったのは、戦前の(固定相場の)平価でした。すべての国家は、戦前の為替レートの平価に戻したいと思っていましたが、国ごとの戦争の関与、経済的破壊のレベルに差異があり、概して、この欲求は全体的に非現実的であったのです。

今日、金本位制に戻る事は、自暴自棄な行為として理解されています。しかし、もし、金本位制が行われているなら、私たちが今目の当りにしているような状況にはなっていないでしょう。私たちに理想的な方法でインフラに費用を投じる余裕はありません。米国は痛ましいまでにそれが必要ですが、結果的にはより良い経済環境の形で資金を投じることになるでしょう。しかし、そのようなインフラによる利益は、負債を返済するための個人のキャッシュフローにはほとんど反映されません。

多くのそうしたインフラストラクチャーは、政府の債務によって資金化されます(国債による資金調達)。連邦債務が対GDP比で3ケタに向かっているということを目前にしてすでに危険領域にあります。私たちは、金本位制に基づいていたなら、この極端な債務状況には決して陥らなかったでしょう。なぜならば、金本位制は、決して一線を越えない財政政策を確実にする方法だからです。

出所:Gold Investor, World Gold Council , 2017 February

http://www.gold.org/research/gold-investor/gold-investor-february-2017