金価格の行方

NY金価格は13日の米公開市場委員会(FOMC)による利上げを前に、ロングポジションの手仕舞売りが続き1241ドルまで下落している。これは利上げ=ドル高=金安という図式であろう。問題はその後の金価格である。当面3月まで利上げは無さそうなので金価格は反発すると思われる。

来年の利上げについては2回~4回という様々な意見があるが、パウエル新議長の方針が不透明なため、また米国の株価を始めとする今後の動き次第であるため、正確な予測はできない。

ドルについてはどうであろうか。為替レートの変動要因の一つに、二国間の金利差がある。金利差の高い通貨は高くなる。欧州では金融緩和の縮小(Tapering)はあり得るが、利上げに至るまでにはまだ時間がかかるだろう。一方、英国は11月のイングランド銀行金融政策委員会で+0.5%の利上げを決め+0.75%と過去最低金利からすでに離脱している。またカナダ中央銀行は7月に続き9月にも利上げして1%の金利となっている。今回米国FOMCが+0.25% 利上げすると、政策目標金利は1.25~1.50%となる。金利差は拡大するが、英国やカナダとの差は以前ほどではない。
ドル高の一つの要素として米国経常収支の動向がある。中長期的には原油輸入が原油輸出に変わるという貿易赤字の是正が大きくドル高要因となる。しかし、法人減税による税収減の財源措置は取られておらず、米国債発行により財政赤字の拡大が考えられる。
米国経済については、株価が過去最高値を更新し続けているがいずれバブルの崩壊はありえよう。個人消費に支えられた米国経済は、今のところ健全性を保っているが、株価次第では消費の手控えもあり得よう。
トランプ大統領は何とか1年の政治日程をこなしたが、内向きの政治姿勢に世界各国はトランプ政権から背を向け始め、イスラエルの首都をエルサレムとするというトランプ大統領の決断は、世界のイスラム教徒の反感を買っている。聞くところではこの決定に対して米国務長官も国防長官も反対していたが、トランプ大統領の選挙向けの計算に押し切られたという。米国のユダヤ人がトランプ大統領を支持するかどうか未知数であるが、外交面では失態と言えよう。 ロシア疑惑にセクハラ問題と火がついた政権批判にどこまで耐えられるか。そうした問題を抱えた米国政権の威信は、世界の目で見る限り失墜しているといえよう。

こうした米国の外交力の喪失をチャンスと見て、ロシアと中国がインドと南アフリカを加えて新たな金市場を創設しようとする動きが出ている。これは基軸通貨としてのドルに対する挑戦である。経済封鎖に反発しているロシアは、中国と協定を交わし、上海黄金交易所においてロシア中央政府が会員権を取得して同市場での金現物取引を開始している。中国とロシアは外貨準備をドルで持つことを減らし、他の国の国債や、金で持つことを選択して、ここ数年で金保有量を増やし、それぞれ世界第6位、第7位まで金保有量を伸ばしている。

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さらにサウジアラビアを巻き込んでオイルマネーのドル決済離れを測っている。かつてサウジアラビアの最大の顧客は米国であった。しかし、シェールオイルの開発から米国の原油輸入量は激減しており、今ではサウジアラビアの最大の顧客は中国となっている。中国との決済通貨はドルではなく中国人民元が取り入れられている。

また世界最大の原油消費国中国にはロシアもパイプラインによりロシア産原油を売っており、この決済は、中国人民元か、もしかして金で支払われる可能性もある。こうしてロシアと中国、サウジアラビアは世界貿易の基軸通貨ドルの勢力を削ごうとしている。国際決済通貨としてのドルの歴史は浅い。15世紀はポルトガルの通貨が主体であり、その後スペイン、英国と変遷しており、ドルが基軸通貨となったのは戦後の70年足らずである。

話を金価格に戻せば、利上げによるドル高の勢いが金価格を押し下げてきた。その背景には米国株価の一方的上昇があった。ドルの上昇がどこまで続くかと考えれば、そろそろ反転するころであろうと思われる。米国だけが利上げしていた昨年ほどドルが強くなることはないだろう。

ということは金の上値に対する重しは取れたということではなかろうか。いずれ世界の株価が頂点に達し下落を始めた時、金価格は反発すると予想する。