ユーロ高→ドル安→商品高

昨年一年でユーロドルは+14%も上昇しG10通貨の中で最も高いパフォーマンスとなった。昨年のユーロ高は、4月から9月にかけての第一波と、その後いったん調整が入ったものの、11月中旬から今に至る第2波に分けることができる。

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そのユーロ高の理由は以下の三つと思われる。

① 「政治リスクの後退」
第一波すなわち昨年前半のユーロ高については、オランダ議会選挙やフランス大統領選・議会選挙等高い注目を集めたユーロ圏主要国の国政選挙において、反EU・極右勢力の伸長という「政治リスクの後退」が挙げられる。景気好転と相まって、これがユーロの見直し買いを促し、ユーロ高が大幅に進むきっかけとなっている。特にフランスでマクロン大統領が誕生したインパクトは大きい。ポピュリズムや極右の台頭がEUの低下に長らく拍車をかけてきたが、ユーロ共通予算、財務相創設など統合深化を公約に掲げる大統領が誕生したことは、これに一矢報い、通貨ユーロに対する信認の意味でゲーム・チェンジャーとなった。英米政治の大混乱・大迷走が反面教師となって、オランダ・フランス・ドイツなどEU原加盟国の有権者が冷静な判断を下した安堵感は大きく、これもユーロが再評価される素地となったように思われる。

① 「底堅さを増す経済活動」
「政治リスク後退」以上にユーロ上昇に弾みを付けたより本質的な背景は、やはり、「ユーロ圏経済の復活」である。2010年~11年の欧州債務危機以降、緊縮財政による景気悪化と慢性的な高失業、更には極右勢力台頭による政治混乱と改革の頓挫などによって、停滞イメージがすっかり定着した欧州経済であったが、ここ数年は 徐々に底堅い成長ペースを取り戻している。企業景況感はドイツを筆頭に過去最高水準での推移が続いており、また、最悪期には12%を超えていた失業率も 8%台へと改善。 この間、600万人近い雇用が創出されている。

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こうしたユーロ圏の景気拡大も 5年目へ突入。回復の初期段階は輸出主導であったために内需に脆弱さが強く残っていたが、最近では雇用改善による消費拡大、及び、企業収益や金融環境の改善を背景とした設備投資拡大など、内需の好循環も成長の牽引役として安定感が高まっている。また、これまではドイツの"一人勝ち"ばかりが目立っていたが、イタリア、スペイン、そしてフランスなど、回復は着実に地域的な広がりを見せている。ユーロ圏 GDP 成長率と相関が高いとされるユーロ圏・総合PMI(IHS マークイット発表)は 2017 年平均で 56.3 を記録。これは 2006年以来の高水準であり、依然上昇を続けている直近の推移にも鑑みて、ユーロ圏 GDP 成長率は目先的に下振れよりも上振れしやすい環境にあると言えるだろう。

③ ユーロ高の背景にある 3つめの要因は、 「欧州中銀(以下 ECB)による大規模緩和からの出口戦略」である。
今年初にユーロドル相場が一段高となった背景も、ECB 理事による発言を受けて資産購入の終了時期が早まるとの観測が再燃したことなどにあった模様。もとよりドラギ総裁は昨年6月シントラ(ポルトガル)での講演で、ユーロ圏ではデフレの脅威がリフレに置き換わったと発言し、政策判断の軸足が超緩和政策からの出口へシフトしていることを巧みに印象付けた。依然好調が続く経済活動とともに、物価指標の上振れも散見されており、ECB の政策判断を巡る市場参加者の関心は「出口戦略の前倒しの可能性」 に集中し続けるだろう。なお、昨年 12 月にECB が発表した四半期毎のスタッフ見通しでは、実質 GDP 成長率予想が+0.5%ポイントの大幅上方修正(2018 年見通し:1.8%→ 2.3%)、物価上昇率(同 1.2%→1.4%)も+0.2%ポイント引き上げられていた。

こうして概観すると、昨年前半に観察されたユーロ高の第 1 波は、ユーロに対する期待値が低かったために発生した"見直しのユーロ買い"であった一方、昨年 11 月以降今に続く第 2 波は、ユーロ圏の景気回復に対する信頼と ECB による出口戦略推進に対する思惑が行き渡ったことによる"やや本気のユーロ買い"と言えるのかもしれない。

ユーロは、過去 10年で 2度の深刻な金融危機に直面し、その存続すら危ぶまれる場面もあった。この間グローバル投資家はユーロ建て資産をアンダーウェイトに据え置いてきたわけだが、昨年は前年に英米で発生したような極端な政治危機が一旦回避され、 また、経済活動の多くがグローバル金融危機以前の水準を回復したことで、株式を中心にアンダーウェイトの修正が大規模に行われた模様である。これにユーロ圏への直接投 資の回復も加わって、ユーロ圏からの純資金流出が縮小し、需給面からユーロを下支えしている。

イタリアやスペイン、そして、ドイツの政局に不安が残るものの、景気回復が期待以上のペースで持続しており、政治面の悪材料に対するユーロ相場への影響は限界的となっている。また、極めて緩慢ながら出口戦略を粛々と進める ECB の方針にも今のところ変化はなく、2018 年もユーロ相場の底堅い推移が続く蓋然性が高いと見て良いのではないか。もっとも、米国では年内に少なくとも 2、3 回の利上げが展望されていること等に鑑みて、この先のユーロの上昇幅はさして大きいものにならないだろう。
(以上公益財団法人国際通貨研究所レポート参照)

昨年はユーロ高の年であったが、それは裏返せばドル安の年でもあった。3度の利上げを行いながら、ドルは一年で約11%値下がり、ユーロドルと対照的であった。NY金価格やNY原油価格等ドル建てで表示される商品価格はドルが安くなれば商品価格高になる。それが、昨年から今年にかけての商品高の一因であろう。NY金は一年で+13.8%高、NY原油は+17.4%高となっている。

上記レポートでは、今年も欧州の景気は一段と良くなり、またECBによる金融緩和の縮小が行われるため、将来の利上げを見越して緩やかではあるがユーロ高が続くとしている。ということは、商品高も当分続く可能性が高い。

提供:ALL先物比較