金は米朝首脳会談や欧米の金融政策が焦点

【金は1,300ドル台で投資資金が流出】

 6月4日の週のニューヨーク金市場は、イタリアやスペインの政局不安が後退するなか、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和(QE)終了の見方が出てユーロ高に振れたことを受けて堅調となった。また主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控えて貿易摩擦に対する懸念が出たことも支援要因になった。ただ米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見込まれており、金ETF(上場投信)から投資資金が流出し、上値を抑える要因になった。今週は12日に米朝首脳会談、12~13日に米FOMC、14日にECB理事会があり、一連のイベントに対する反応を確認したい。

 イタリアで新政権が誕生したことやスペインで政権交代が円滑に行われたことを受けて政局不安は一服した。ただイタリアではコンテ新首相が所信表明演説で、国民に急進的な変革をもたらすと述べたことを受けてイタリア国債が売られた。大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」の連立政権が誕生し、歳出拡大など政策に対する懸念が残っている。一方、欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で量的緩和(QE)終了を予断を持たず議論すると伝えられた。プラートECB専務理事は、インフレが目標に向けて上昇していくことへの自信を深めており、理事会で債券買い入れ策を年内に終了させるかどうか討議すると述べた。

 主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言では、米、カナダ、日本、英国、イタリア、ドイツ、フランスの7カ国の首脳は「自由で公平かつ互恵的な貿易」の必要性と保護貿易主義と闘う重要性で合意したとし、「関税障壁や非関税障壁、補助金(による障壁)の削減を目指す」方針を掲げた。しかし、G7サミットを途中で切り上げたトランプ大統領は、米朝首脳会談が行われるシンガポールに向かう途中、首脳宣言を受け入れないと発表した。米大統領はカナダのトルドー首相が「米国の関税は侮辱的」、「(カナダは米国の)言いなりにならない」と発言したことに対し、極めて不誠実で弱い奴だ、とした。カナダ、日本、ドイツに打撃を与える可能性のある自動車輸入関税の導入も示唆しており、引き続き通商問題に対する懸念が残る。また3度目の米中通商協議で、ロス米商務長官ら米代表団は、公式な声明を発表することなく中国を離れており、今後の協議の行方を確認したい。

 今週は米朝首脳会談や米FOMCが焦点である。米朝首脳会談に関して、トランプ米大統領は、金委員長が真剣かどうか、北朝鮮の核兵器を巡って「何か前向きなことが起きる」かどうかは「最初の1分以内」に分かるだろうと述べた。また朝鮮中央通信(KCNA)は、金正恩朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領の会談について、朝鮮半島の「恒久的かつ堅固な平和維持の枠組み」と非核化のほか、相互に関心のある問題を議論すると報じた。会談が成功すると、金の圧迫要因になる可能性がある。一方、米FOMCでは利上げが確実視されており、今後の金融政策の見通しが焦点である。年4回の利上げ予想が示されると、ドル高に振れるとみられる。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月5日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは11万1,416枚となり、前週の11万5,130枚から縮小した。今回は手じまい売りが8,331枚、買い戻しが4,617枚入り、買い越しを3,714枚縮小した。一方、6月8日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比7.66トン減の828.76トンとなった。

【プラチナはGFMSが底入れ見通しを示す】

 ニューヨーク・プラチナ7月限は貿易摩擦に対する懸念が上値を抑える要因になったが、ユーロ高などを受けて900ドル割れの安値は買い拾われた。トムソン・ロイターGFMSの「プラチナ・グループ・メタルズ(PGM)・サーベイ2018」で、今年のプラチナは11.8トンの供給不足が予想され、昨年の1.2トンの供給不足から不足幅を拡大するとみられた。プラチナ価格は6年間の下落トレンドから徐々に上昇し、下半期には1,000ドル台を回復すると予想された。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月5日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2,146枚となり、前週の4,016枚から縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、7日のロンドンで11.22トン(1日11.21トン)、8日のニューヨークで15.83トン(同15.54トン)、南アで25.54トン(同25.42トン)に増加した。

【原油は調整局面を継続】

 ニューヨーク原油は、石油輸出国機構(OPEC)やロシアの増産見通しを受けて調整局面を継続し、4月10日以来の安値64.27ドルを付けたのち、ベネズエラの供給減少に対する懸念を受けて下げ一服となった。6月22日のOPEC総会が当面の焦点である。一方、米エネルギー情報局(EIA)が発表した6月1日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比207万2,000バレル増加した。事前予想の210万バレル減から予想外に増加した。また米原油生産は日量1,080万バレルと過去最高を更新した。一方、米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された6月8日までの週の米石油リグ稼動数は前週比1基増の862基となった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月5日時点のニューヨーク原油の大口投機家の買い越しは58万3,576枚となり、前週の60万7,828枚から縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。一方、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている原油ETF(コード:USO)の残高は8日時点で1億4,020万株となり、前週末比190万株増加した。

【6月11日からの週の注目ポイント】

11日 英貿易収支(4月) ☆☆
英鉱工業生産指数(4月) ☆☆
12日 米朝首脳会談 ☆☆☆
独ZEW景況感指数(6月) ☆☆
米消費者物価指数(5月) ☆☆☆
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目 ☆☆
13日 英消費者物価指数(5月) ☆☆
ユーロ圏鉱工業生産(4月) ☆☆
米生産者物価指数(5月) ☆☆
米FOMC声明文公表 ☆☆☆
14日 日銀金融政策決定会合1日目 ☆☆
中国小売売上高(5月) ☆☆
中国鉱工業生産(5月) ☆☆
独消費者物価指数(5月確報) ☆☆
金融政策理事会(ECB) ☆☆☆
米小売売上高(5月) ☆☆☆
15日 日銀金融政策決定会合発表 ☆☆☆
ユーロ圏消費者物価指数(5月確報) ☆☆☆
ニューヨーク連銀製造業景況指数(6月) ☆☆
米鉱工業生産・設備稼働率(5月) ☆☆
ミシガン大消費者信頼感指数(6月速報値) ☆☆
対米証券投資(4月) ☆☆

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ニューヨーク金はドル安が支援も投資資金が流出
ニューヨーク金8月限はイタリアやスペインの政局不安が後退したのち、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和(QE)終了の見方や主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控えて貿易摩擦に対する懸念が出てドル安に振れたことが支援要因となった。ただ米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見込まれるなか、1,300ドル台で金ETF(上場投信)から投資資金が流出し、上値を抑える要因になった。レンジ相場を形成しており、テクニカル面ではどちらに放れるかが当面の焦点である。また12日には米朝首脳会談があり、北朝鮮の非核化の行方も確認したい。

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2018年6月11日

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