金は強弱材料交錯でレンジ形成

【金は1,300ドル割れで買い戻しも投資資金が流出】

 5月28日の週のニューヨーク金市場は、イタリアの連立政権樹立によるユーロ安一服が下支えとなり、1,300ドルを挟んでもみ合いとなった。ただ好調な米雇用統計を受けて戻りを売られた。またスペインでラホイ首相の不信任案が可決されるなどし、ユーロ圏の先行き懸念が残る。トランプ米大統領が米朝首脳会談を12日にシンガポールで開催すると発表する一方、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で米政府による鉄鋼・アルミニウムの輸入関税措置が批判されたことに加え、米中通商協議に対する不透明感が残ることは下支え要因である。

 イタリアで再選挙の可能性が出てユーロの是非を問う国民投票になるとの見方からリスク回避の動きとなったが、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右の「同盟」が再び連立政権樹立を模索すると先行き懸念が後退し、ユーロ安が一服した。法学者のジュセッペ・コンテ氏が1日、新首相に就任し、連立政権が発足した。再選挙は回避されたが、欧州で初の反体制主義を掲げる政権の誕生となり、先行き不透明感が残っている。ジョバンニ・トリア新経済相は、イタリアにはユーロ圏離脱を望んでいる政党はなく、自身も離脱は望まないと述べた。一方、スペインではラホイ首相の不信任決議案が可決され、社会労働党のサンチェス書記長が首相に就任した。解散総選挙は回避されたが、今後の行方を確認したい。

 5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は22万3,000人増となり、事前予想の18万8,000人増を上回った。失業率は3.8%(前月3.9%)に低下し、2000年4月以来の低水準となった。また時間当たり平均賃金は前月比0.3%増と事前予想0.2%増を上回った。CMEのフェドウォッチによると、12月の米連邦準備理事会(FRB)の2.25~2.50%への利上げ確率は32.1%と前日の31.8%から上昇し、年4回の利上げ予想が戻った。ただ米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、賃金の伸びは上向いてはいるものの、失業率の低下を踏まえると、より力強い伸びを予想していたと述べた。労働市場になおスラック(需給の緩み)が残っていることを示しているとの見方を示しており、今後発表される米経済指標を確認したい。また通商問題の行方も焦点である。トランプ米政権が欧州連合(EU)とメキシコ、カナダからの輸入鉄鋼とアルミに暫定的に適用除外となっていた関税措置を発動すると発表したことに対し、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で批判が出た。さらに中国は米大統領が関税賦課の脅しを実行に移すなら、通商問題を巡る米国との協議でこれまでに表明した全てのコミットメントを撤回すると警告した。ロス米商務長官が訪中し、3度目の米中通商協議が行われた。一方、トランプ米大統領が米朝首脳会談を12日にシンガポールで開催すると発表した。ただ米大統領が「1回の会談ですべてが成し遂げられるとは思わない」と述べ、複数回の首脳会談が必要になるとの見通しを示したことに対し、北朝鮮の術中にはまりかねないとの見方が出ており、会談の行方を確認したい。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月29日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは11万5,130枚となり、前週の9万0,957枚から拡大した。今回は新規買いが3,975枚、買い戻しが2万0,198枚入り、買い越しを2万4,173枚拡大した。一方、6月1日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比12.08トン減の836.42トンとなった。

【プラチナは900ドル台でもみ合い】

 ニューヨーク・プラチナ7月限はユーロ安が一服するなか、900ドル台でもみ合いとなった。ただ米通商問題に対する不透明感が残っており、需要が伸び悩むと、上値が抑えられる可能性がある。一方、5月の米新車販売が好調となり、パラジウムが急伸し、1,000ドル台を回復したことが下支え要因である。テクニカル面では896.3~916.0ドルのレンジをどちらに放れるかを確認したい。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月29日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは4,016枚となり、前週の1,462枚から拡大した。新規買いが新規売りを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、23日のロンドンで11.10トン、1日のニューヨークで15.54トン(25日15.54トン)と横ばい、南アで25.42トン(同25.30トン)に増加した。

【原油はOPECやロシアの増産見通しで調整局面】

 ニューヨーク原油は、石油輸出国機構(OPEC)やロシアの増産見通しを受けて調整局面を迎え、4月11日以来の安値65.51ドルを付けた。イランやベネズエラの減産による影響を相殺するため、OPECとロシアは協調減産の規模を縮小するとみられている。6月22日のOPEC総会を控え、産油国の当局者の発言などを確認したい。一方、米エネルギー情報局(EIA)が発表した5月25日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比362万バレル減少した。事前予想は60万バレル減。また米原油生産は過去最高を更新した。一方、米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された6月1日までの週の米石油リグ稼動数は前週比2基増の861基となった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月29日時点のニューヨーク原油の大口投機家の買い越しは60万7,828枚となり、前週の63万3,386枚から縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。一方、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている原油ETF(コード:USO)の残高は1日時点で1億3,830万株となり、前週末比250万株減少した。

【6月4日からの週の注目ポイント】

4日 トルコ消費者物価指数(5月)
米製造業新規受注(4月)
5日 豪中銀政策金利 ☆☆☆
米ISM非製造業景況指数(5月) ☆☆
6日 豪GDP(第1四半期) ☆☆
インド中銀政策金利
米貿易収支(4月) ☆☆
7日 トルコ中銀政策金利 ☆☆☆
日米首脳会談 ☆☆
8日 日本国際収支(4月)
日本GDP改定値(第1四半期)
中国貿易収支(4月)
G7首脳会議 ☆☆☆
9日 中国消費者物価指数(5月)
中国生産者物価指数(5月)

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ニューヨーク金は1,300ドル前後でもみ合いも投資資金が流出
ニューヨーク金8月限はイタリアの連立政権樹立によるユーロ安一服が下支えとなり、1,300ドル前後でもみ合いとなった。ただスペインでラホイ首相の不信任案が可決され、5月の米雇用統計が好調な内容となるなか、金ETF(上場投信)から投資資金が流出した。ただ米大統領が米朝首脳会談を12日に開催すると発表する一方、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で米政府による鉄鋼・アルミニウムの輸入関税措置が批判され、通商問題に対する懸念が残る。強弱材料が交錯するなか、テクニカル面では5月21日安値1,286.8ドルを維持できるかどうかが焦点である。

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2018年6月5日

提供:ALL先物比較