金は米税制改革法案の可決見通しなどが圧迫

【NY金の大口投機家の買い越しが大幅に縮小】

12月11日週のニューヨーク金市場は、2月限が7月14日以来の安値1,238.3ドルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル安を受けて下げ一服となった。米FOMCでは0.25%利上げが決定されたが、来年の3回利上げ予想を維持、インフレに対する慎重な見方が示された。声明では「労働市場が引き締まり続け、経済活動が堅調な速度で拡大していることを示している」とされたが、インフレに関しては「将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いままで、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標は、総じてあまり変わっていない」とされた。11月の米消費者物価指数(CPI)のコアCPIが前月比0.1%上昇と前月の0.2%上昇から減速しており、低インフレが続くと、来年の米連邦準備理事会(FRB)の利上げが遅れる可能性も出てくる。ただ11月の米小売売上高が前月比0.8%増と事前予想の0.3%増を上回っており、今後発表される米経済指標を確認したい。一方、米税制改革法案の一本化作業では、共和党の上院議員2人が子供の税額控除の変更を要求し、先行き不透明感が強まる場面も見られたが、週末までにまとまった。法人税率は2018年から21%に引き下げ、2025年までの時限措置として、個人所得税率の引き下げ、基礎控除引き上げ、子供の税優遇措置拡大、州・地方税控除と住宅ローン利子控除の修正が盛り込まれた。米上下両院で今週、可決される見通しとなり、リスク選好の動きが強まると、金の戻りが売られる可能性が出てくる。

英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)交渉について、メイ英首相は民主統一党(DUP)とのアイルランド国境問題の協議をまとめ、8日に欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長と合意した。15日のEU首脳会議で「十分な進展」があったと判断され、「第2段階」となる通商協議に入ることが承認された。2019年3月末の英離脱後の激変を緩和する「移行期間」を設けることで合意し、交渉を2018年1月から始める。EUは「いいとこ取りは許さない」としており、厳しい交渉が見込まれている。一方、国連の安全保障理事会で北朝鮮による核・ミサイル開発の閣僚級の会合が15日に開かれ、北朝鮮の国連大使も出席した。北朝鮮は核・ミサイル開発を「自衛的な措置だ」と主張する一方、ティラーソン米国務長官は米国が北朝鮮と対話を持つには、北朝鮮が兵器実験を「持続的に中止」する必要があると述べ、平行線となった。国際社会の圧力で朝鮮半島の非核化を達成できるのか、米国が軍事力を行使するのか、引き続き確認したい。

仮想通貨ビットコインが10日、シカゴ・オプション取引所(CBOE)の先物市場で上場し、価格は急騰し、サーキットブレーカーが2回発動した。価格変動が急激過ぎるとして業界団体は懸念を表明している。また米国先物業協会(FIA)は、ビットコインは当局の監視が手薄だと危惧している。パフォーマンスの大きな違いから、仮想通貨が金から需要を奪うとの懸念が出ているが、ゴールドマン・サックス・グループは金の代わりにはならないとの見方を示している。ビットコインは金に比べ、ボラティリティーが高く、流動性が低い。またビットコインの時価総額2,750億ドルは、金の市場規模8兆3,000億ドルに及ばない。分散投資とヘッジの手段として長い歴史の中で証明された金にビットコインが代わり得ると、投資家が確信するとは思われない、との見方が示された。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で18日に先物上場が予定されており、ビットコインが引き続き注目されることになりそうだ。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月12日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは10万7,068枚となり、前週の17万3,329枚から縮小した。今回は手じまい売りが4万9,322枚、新規売りが1万6,939枚出て買い越しを6万6,261枚縮小した。一方、12月15日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比1.48トン増の844.29トンとなった。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル安を受けて安値拾いの買いが入った。

【プラチナは売り過剰感が出ると下支え要因】

ニューヨーク・プラチナ1月限は、一時安値872.4ドルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル安を受けて下げ一服となった。米税制改革法案の可決期待による株高も下支えとなった。大口投機家の売り玉が増加しており、売り過剰感が出ると買い戻し主導で上昇する可能性が出てくる。一方、南アのシバニェ・スティルウォーターによるロンミン買収が伝えられた。今後のリストラが供給減少につながると下支えになるとみられる。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月12日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万2,824枚となり、前週の2万7,028枚から縮小した。新規売りが新規買いを上回った。一方、プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、15日のロンドンで12.31トン(8日12.35トン)に減少、ニューヨークで18.83トン(同18.53トン)に増加、14日の南アで24.12トン(同24.12トン)と横ばいとなった。

【NY原油は高値もみ合いに】

ニューヨーク原油は、北海油田のパイプライン停止が支援要因となる場面も見られたが、米ガソリン在庫増加や米原油生産量拡大に上値を抑えられた。ブレント原油は2015年6月以来の高値65.83ドルを付けたのち、上げ一服となった。英国最大の原油パイプライン「フォーティーズ」(輸送能力日量45万バレル)。原油漏れが見つかり、11日に稼働を停止した。修理に2週間かかるとみられている。一方、国際エネルギー機関(IEA)が発表した月報で、来年前半は日量20万バレルの供給過剰が続くが、来年後半にかけては同20万バレルの供給不足になり、全体として均衡化するとの見通しが示された。米エネルギー情報局(EIA)が発表した12月8日までの週間石油統計で、原油在庫は前週比511万7,000バレル減少したが、ガソリンが566万4,000バレル増加した。また米原油生産量が日量978万バレルと最高水準を更新した。米油田サービス会社ベーカー・ヒューズから発表された12月15日までの週の米石油リグ稼動数は前週比4基減の747基となった。

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、12月12日時点のニューヨーク原油の大口投機家の買い越しは61万4,497枚となり、前週の61万1,128枚から拡大し、3週連続で過去最高を更新した。一方、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で取引されている原油ETF(コード:USO)の残高は12月15日時点で1億8,110万株となり、前週末比560万株減少した。高値圏でのもみ合いとなるなか、利食い売りが出た。

【12月18日からの週の注目ポイント】

18日 日銀短観企業物価見通し ☆☆
19日 独IFO景況感指数(12月) ☆☆
米住宅着工件数(11月) ☆☆
20日 米中古住宅販売件数(11月) ☆☆
英首相、党首討論 ☆☆
21日 日銀金融政策決定会合 ☆☆☆
米GDP確報値(第3四半期) ☆☆
スペイン・カタルーニャ州議会選挙 ☆☆☆
22日 米耐久財受注(11月) ☆☆
米個人所得支出(11月) ☆☆☆
米新築住宅販売件数(11月)

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ニューヨーク金は下げ一服も戻りは限られるか
ニューヨーク金2月限は7月14日以来の安値1,238.3ドルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のドル安を受けて下げ一服となった。ただ米FOMCでは来年3回の利上げが予想された。また米共和党で税制改革法案がまとまり、今週、米上下両院での可決が見込まれている。12月15日の戻り高値1,264.5ドルは11月27日高値から12月12日安値に対するフィボナッチ・リトレースメント31.8%戻しの水準であり、目先の抵抗線となりそうだ。

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2017年12月18日

提供:ALL先物比較