歴史で学ぶ金価格-1980年代~1990年代

1980年のピーク

日本で金が一般的な投資対象として扱われ始めたのは1978年だと言われています。1978年4月に金輸出が自由化になったことから金が投資対象として広く認識され始めたのです。その直後に金の価格はさっそく史上最高のピーク値を迎えることになります。

1980年の1月に金の価格は史上最高値である「1g=6,945円」を記録します。ソ連のアフガニスタン侵攻によって、歴史的高値を見せたのです。しかしその後の4か月間で3,000円以上の下落を見せて5月には3,645円を記録することになります。その背景には戦争がありました。前回のコラムでも戦争を境に金価格や世界の通貨制度に大きな変化が起きたのを確認したように、金価格のピークにもやはり戦争が影響を与えたのです。79年2月にイラン革命が起こり、第2次石油危機という事件が発生しました。同じ年の11月にはテヘランにあるアメリカ大使館の占拠事件、続いて12月にソ連によるアフガニスタン侵攻がありました。翌年の80年になるとイランとイラクの間での戦争が本格化したのです。

このような事件を受けて金の価格は上昇しました。各国の情勢、特にアメリカの情勢が不安定になると金の価格は上昇します。これは金の価格変動における方程式だとも言えるかも知れません。今でもドルは世界経済における基軸通貨ですので、ドルの危機は貨幣価値の危機になります。従ってアメリカの情勢が不安定で人々は貨幣価値の影響が少ないとされる金投資に資金が集まってくるため金の価格は上昇するという方程式となります。

しかし、80年の1月に6,945円というピークを迎えた金の価格は同年の5月には3,645円になりました。僅か4か月の間に3,000円以上の下落幅を見せたのです。その原因として挙げられるのは緊張緩和です。アメリカとソ連による緊張状態が緩和されたことでドルに対する信頼度は高まりました。ドルへの信頼が高まれば金価格は下落することが分かります。また史上最高値のピークの半減を迎えたことからみても、しばらくの間は価格の下落が続くだろうと人々はある程度予想していました。 しかし予想を超えて、この下落トレンドは20年以上も続きました。

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金価格の低迷期

このように、結果的に金価格は1980年以降2000年までの20年間にわたって下落を続けます。そのトレンドのスタートを切ったのが1983年OPECによる原油価格の大幅な値下げだと言う人もいます。一般的に金の価格と原油価格は同じ方向で動くことが多いです。また日本において80年代は高度の経済成長があった時代でした。85年のプラザ合意、87年のブラックマンデーなどの影響もありましたが、それにかかわらず日経平均株価は成長を続け4万円近くになった時期もあります。株式のように元本毀損のリスクがある投資商品がダメになりそうになった時の代替商品としても知られている金ですから、逆に考えると株価の上昇が予想されていると金投資への魅力が減っていくのは事実かも知れません。投資家の立場からすれば、右肩上がりが続く株価の状況を目の前にして、金への投資は難しいからです。実際に金に投資される金額も減ってしまいました。このような背景もあって、1980年代は金投資への需要が低迷し、金の価格も下落していった時代でした。 

1990年代、下落を続けていた金の価格はついに史上最安値を記録することになります。80年の最高値を記録してから18年後のことでありますが1998年の1グラム865円という瞬間最安値記録は今も敗れておりません。日本の80年代後半を含め一般的に高度の経済成長の陰にはバブルという場合が多いです。日本におけるバブルの崩壊は1991年に起こることになりますが、バブルの崩壊後にも金の価格は下落を続けます。90年代に入ってから各年の金の平均価格はずっと1,000円台でした。80年代の2,000~4,000円前後と比べるとこの10年間は金を持っている人にとっては苦悩の時期だったかも知れません。しかし、金の価値の将来性から、今が金投資の適期だと考えた人がいれば資産増につながっているはずです。98年に金を10Kg買ったとするとその年の平均価格は約1gで1,300円ですので1億3千万円になります。去年の2015年の平均価格は4,500円ですので4億5千万円で売ることが出来ました。投資時期を上手く選べれば金はリスクヘッジ商品としてだけではなく儲けられる商品にもなるということが分かります。

90年代まで下落トレンドの中にあった金の価格は2000年代に入ってからは上昇トレンドへと変わっていきました。次の編では2000年代における金の価格の変化を見てみることにします。