歴史で学ぶ金価格-1870年代~1970年代

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はじめに

金の価格は波うちを見せながらも歴史上上昇してきた。今回はまず1870年代から1970年代までの100年間、日本を含む世界各地で起きた金に関連する制度や事件から、金の価格がどのような影響を受けてきたのかについて述べたい。大きく第2次世界大戦の前後に分けて概観する。

第二次世界大戦までの金の歴史

金のその長い歴史のなかでとても短い期間のようにも思えるが、世界各国の関係が密接になり、国内事情だけではなく国外の事情とも連動し、金の価格が激しく変動し始めたのがまさにこの1870年代からのことである。

日本における価格変化といっても、世界各地の価格の変化と足並みをそろえてきた。その各国の関係がより密接になっていく過程を表す資料には「金」という言葉が頻繁に登場している。「金本位制」があったためだ。金本位制は1813年イギリスで初めて確立された制度であり、通貨価値を純金で保障することを言う。その後世界中に金本位制が広がっていく中で、1871年には日本でも金本位制を採用した。

明治政府が純金を「1.5g=1円」、つまり「1g=67銭」に決定した。1銭の価値は、今でいうと100円から200円程度だと言われている。150円だと仮定すれば1gに約1万円である。2016年の1gの平均価格は4,494円であることと比較してみると価格は別として今より金の価値は高かった方と言えるだろう。

その後第一次世界大戦の影響で金本位制は各国で中止になった。しかし、戦後には各国の経済も徐々に復興した。その影響で1925年に英国を含む各国が金本位制を再び採用した。しかし、1929年に世界大恐慌が発生し、世界各地で金本位制が機能しなくなるほどの混乱が起きた。深刻化する恐慌によって世界的な金融不安が広がり、日本の内閣でも金輸出を再び禁止することを決定した。

1931年から2年間にかけて次々と金本位制から離脱していく状況であったことと歩調を合わせた決定だったと言えるだろう。結局、1933年3月にアメリカまでも金本位制を放棄したことで世界は管理通貨制度に移行した。つまり、貨幣を金に換えることへの保証がないという不換紙幣の時代になったのである。1944年になると、ドルを基軸通貨にする「1oz=35ドル」になった。(1oz=約31.1035g)

第二次世界大戦後の金価格
変動為替相場制へ

第二次世界大戦後はアメリカの勢いが強かった。ブレトン・ウッズ体制をつくった事実上米国は、ドルを唯一の基軸通貨にするために圧力をかけていた。その影響で日本の円は1ドルあたり360円と固定されたが、日本にとっては円安の水準で決められたため、経済成長の効果を生んでいた。

また金の価格は「1oz=775円」という固定相場制だった。しかしその後アメリカ合衆国の経済の後退がみられ、ドルを基軸通貨としていたブレトン・ウッズ体制は、為替の固定相場制から変動相場制に変わった1973年に幕を閉じた。

1960年代における当時のアメリカ合衆国は、ベトナム戦争や社会保障政策を進めた結果として深刻な財政赤字の状態に陥っていた。また、戦後の西ヨーロッパと日本の経済が復興したためアメリカの輸出は減少をみせていた。このことは、今まではアメリカに輸出代金として入ってきた金の量が減り、相対的に輸入が増えることを意味する。結果としてアメリカ合衆国の金の流出は増え続けた。このことを理由に1971年にアメリカのニクソン大統領はドルの兌換を停止することと輸入課徴金の課すことを発表した。このような一連の過程を経て1973年に各国は固定相場制に終わり告げて、変動相場制へと移行した。

1970年代

上述のように、73年に固定相場制から変動相場制に移行したことで100年以上も続いた金本位制は終了した。金価格は明治以降、1973年4月の「金輸入自由化」まで、日本銀行が定める「公定価格」として決められていた。しかし金輸入が自由化した後も、長い間金は投資・投機の対象となることはなかった。それは日銀が国内で生産されるすべての金を買い上げた後にその一部だけを装飾品用として市場に供給していたためである。日本で金が一般的な投資対象として認識され始めたのは78年4月の金「輸出」の自由化の以降だとされている。

当時、金の投資商品としての価値はどれほどだっただろうか。日本における1977年の金の価格は1,355円だった。今の価格の約4分の1の水準である。当時1,355円分の金を買った人と、1,355円をそのまま持っていた人が現在にタイムスリープしてきたら生活水準は4倍近くの差が出るということになる。物価上昇率によって貨幣価値は落ちていくからである。

実際に世界の各地でも、亡命などをする際に自国の通貨を持ってきた人と金を持ってきた人とは新しい国での社会的地位は天と地の差ほどであったことを示すような歴史話はたくさん存在している。亡命をするほど国内事情が不安な場合においては自国の貨幣価値は急落するからである。

その後、70年代から2016年まで金の価格は波を打ちしながらも価格の上昇を見せてきた。このことは金への投資は長期的に有利であることを示している。時の流れによる貨幣価値の下落が当たり前であるような今の社会で利益が出る投資である唯一の投資商品なのかもしれない。